ハンドメイドを続けている中で、なかなか思うように売上が伸びず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
作家の皆さんも、価格を抑えて販売したり、売れているジャンルに挑戦したりと、さまざまな努力をされていると思います。
「もっと売上を伸ばしたい!」「ハンドメイドで何とか生活できるようになりたい!」と願う作家さんのために、売上アップにつながるヒントを解説していきます。
皆さんは「ひかり味噌」という会社をご存じでしょうか?
今回は、15年連続で売上を伸ばし続け、業界3位に位置するみそメーカー「ひかり味噌」の成長の理由や躍進のキッカケを、ハンドメイドに置き換えて解説していきたいと思います。
ひかり味噌どんな会社?
売上高:215億円
従業員数:309名
事業:味噌󠄀、即席味噌󠄀汁、加工食品の製造販売
創業:1936(昭和11年)
※ 現社長の曽祖父(ひいおじいさん)の代でスタート
ハンドメイドは一人で活動されている方がほとんどだと思います。
そのため「こんなに大きな会社が参考になるのだろうか?」と思われる方もいるかもしれませんが、考え方やアイデアを広げる大きなキッカケになると思います。
ひかり味噌はみそメーカーでは後発だったため、曽祖父の代から現社長の父の代まで、自転車操業のような経営でした。
世の中には、マルコメ、ハナマルキなどの大手味噌が広く出回っている状況。
現社長は大学卒業後はエプソンに入社し、海外事業部で働いていましたが、父に呼び戻されて「ひかり味噌」に入社、最初は現場を学ぶために、営業として働きました。
入社当時は、経営が厳しい状態。味噌のPB(プライベートブランド)商品を作っていましたが、自社商品は世間に知られることがなく、売行きはとても悪かった。
しかし、あるキッカケで、歯車が好転していきます!
ひかり味噌の人気
・おすすめ商品

独自の麹菌で作られたフルーティーな味噌はそのまま食べれる。
野菜をディップして食べるのにおすすめ
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有機大豆、天日塩、国内産の米を使用。
素材の味を生かした贅沢、最高級のお味噌

味噌のボジョレヌーボ。短期熟成みそ。初物の味わい
早熟で長期熟成された味噌とは違った、甘くフルーティーな香りが漂う、今だけしか味わえないお味噌。
ひかり味噌の躍進の原動力
【問題】味噌にとっては厳しい時代
味噌の需要減少:ピーク時50t→現在30t
味噌全体として日本での消費が減少している。
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原因:食の多様化・少子高齢化・核家族化と家族そろっての食事の減少
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どうやってこの苦難を乗り越えるか!?
ハンドメイドにとって大きな問題は、趣味の多様化・安くて可愛い製品があふれている。
さらに、少子高齢化はハンドメイドにも大きな問題です。
若い人口が減っているということは、たくさん物を消費する世代が減少しているということ。
サブスクで映画やドラマを楽しんだり、近年はカプセルトイが特に人気です。
ハンドメイドの商品を買わなくても、楽しめることが世の中にはたくさん溢れています。
この困難をどう乗り越えたらいいのか???
躍進の原動力
多品種・少量生産 →トータルで大きく成長できた!
通常なら、商品を絞って製造した方がコストを抑えることができると思いますが、それは大手がすでにやっていること。
大手と同じことをやっていては、追いつけるはずがない。
では、どうするか?
色々な商品を作る!
ひかり味噌は、他の味噌メーカーと比べると、PB(プライベートブランド)商品を含めて、圧倒的な商品数があります。
効率的に商品を作っているとは言えません。
しかし、なぜこんなに躍進して、また、この多品種生産が躍進の原動力になっているのか?
危機感
ひかり味噌はこんな危機感を抱いていた!
いつまでも、ごはんの横に味噌汁があるはけではない!
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どうしたらいいのか、悩んでいた。
キッカケ
味噌汁以外の用途を考えよう!
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色々と試験をする中で、独特の風味の味噌が生まれた!
・生麹(上で紹介している商品)
フルーティーな香りで甘みのあるお味噌。
「これなら加工せずに、そのまま食べてもらうのはどうだろ?」と思って、そのまま販売することに。
野菜スティックにつけて食べるとおいしい。野菜嫌いの子どもがどんどん野菜を食べる。
・初熟(上で紹介する商品)
ボジョレヌーボと同じように、早熟で楽しめるみそ。
小さな積み重ねで、少しづつ売り上げを伸ばしてきた!
新しいものを生み出すのは簡単なことではありません。すぐに売れる商品ができたはけではないはずです。
多くの時間とお金がかかったと予測できます。
また、本当に多くの人に愛される商品を作ることができるのか!?という苦悩もあったと思います。
この苦悩に打ち勝つには、強い信念と努力でしょう。
強く信じるためには、ふわふわとした妄想だけでは続きません。
確信できるような、情報がなければ、信じて努力することはできないでしょう。
つまり、情報収集が大事だということ。
自ら率先して行動を起こす!
ひかり味噌は、たくさんの試験をすることでデータ蓄積されます。
少し熱が高いと味噌の味が尖ってくる、さらに熱を加えると、味に雑味が生まれるなどのデータが蓄積されたと予測されます。(このようなことが行われたのかもしれないと想像)
この味をどのようにして、市場に広めるか、市場調査も行われたと思います。
今売れているジャンルを作っている作家さんも多いと思いますが
売れている商品は、新しくハンドメイドに参入する人も、同じようにその商品を作るはずです。
需要が減る中で、多くの作家さんが同じものを作っては、価格競争の波にのまれたあげく、売れない在庫を抱えることに。
現社長の転機
ひかり味噌は、現社長の曽祖父(ひいおじいさん)からスタートした、みそメーカーでは後発。
現社長が、ひかり味噌に入社した当時は、スーパー向けのPB商品ばかりを販売していた。
そこで、スーパーのバイヤーからある一言を言われた。
バイヤー「うちのPBはいいんだけど~。自分のところの製品はどうなの?」
当時、ひかり味噌は、世間ではほとんど知られていなかった。
バイヤーの一言に、現社長は「悔しい」と思った!
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そこで行ったこと
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現社長は思った「圧倒的な特徴商品を作ってやる!」
当時売れていなかった「円熟(上で紹介する商品)」を国産米と有機大豆、天日干しの塩に原材料を変え、材料価格は2倍になったが、販売価格は据え置きにした。
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会社にとっては厳しいやり方だったが、「販売が圧倒的に増えれば、製造コストはまかなえるはずだ!」 と思って販売。
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結果的には、全国で取り扱いが増え、ひかり味噌の知名度が上がっていった!
危機感こそ、成長のきっかけになると私は確信しています!
私たち人間は、危機がなければ、改善策を考えようとしません。
現社長は、ひかり味噌を変えたと思いながら、入社当時は目の前の仕事に一生懸命取り組んでいたのだと思います。
その時に、信頼のおけるバイヤーさんから、「自分のところの製品はどうなの?」との一言。
きっと、そのバイヤーさんは一生懸命頑張る、現社長のために商品を扱ってあげたいと思ったのでしょう。
その時のひかり味噌には、これといった目を引くような商品がなかっため、バイヤーさんから、あのような発言があったのかもしれませんね。
危機感を抱いた社長は、「他とは違う!圧倒的な商品を作ろう」と商品開発を始めたのです。
これは、まさに、ハンドメイドにも言えることではないでしょうか。
他とは違う!圧倒的商品!これが大きなキッカケになるはずです。
ひかり味噌の考え方
現社長は入社以前は、エプソンで働いていました。ひかり味噌の考え方は7割がエプソン流。
「自分のブランド、自分の販路は自分で築く!」
「何とか自分の意志で考えて、商品を作って、お客さんに買っていただきたい」という欲望、願望は、現社長がひかり味噌に入社してからどんどん強くなっていきました。
お父さんに頼まれての入社でしたが、毎日が口論、口論、口論でした。
最後はお父さんが根負けして「お前がすきなようにやれ」と言ったそうです。
「自分のブランド、自分の販路は自分で築く」こちらもハンドメイドと通じる部分です。
ブランドとし確立させるためには、大きな特徴が必要です。
他と変わり映えしないなら、別にその他の商品でもいいわけですし、消費者としてはなるべく安い方がいい。
特徴がなければ、ブランドとして知ってもらうことができません。
それから、販路拡大や販路の開拓をすることも必要です。
思い切って今まで販売していなかったところで売ってみる!
メルカリのハンドメイドを紹介している私としては、消費者が多いメルカリを強く押しますが、
お客さんの生の声を聞けるマルシェは、販路拡大、商品開発のキッカケになると思います。
直接お客さんと話ができることで、どんな商品を欲しがっているのかを知れますし、
その他にも、マルシェではハンドメイドの委託販売業者が、取扱いしたい作家さんを探しています。
今は手軽にネット販売を誰もができますが、一人で全てのことをこなすのは、作家さんはとても大変でしょう。
もしも、委託販売先が決まれは、定期的な売り上げにつながります。
作家さんは、作品のアイデアを考え、作品を作ることに忙しいと思いますが、ただ黙々と、作品のことだけやっていても何も変わらないんです。
自ら新しく行動を起こすことが大事!
海外へ販路拡大
現社長は、エプソンの海外事業部で働いた過去があります。
だからこそ、いつかは海外で仕事をしたいと思っていました。
その考えがあったからこそ、「円熟(上で紹介する商品)」の改良をする際に、海外の有機大豆の仕入先を調べることになったそうです。
「円熟」は、かつての材料費の約2倍のコストがかかっていますが、それでも極限にコスト削減を努力したそうです。
海外から有機大豆を仕入れる際に、大量仕入れを行いました。
「円熟」が成功して、3年後には海外に販路をのばすため、アメリカで売り込みを始めました。
アメリカでも、ひかり味噌は後発だったため、中々うまく市場開拓ができませんでした。
現社長は考えます。
「有名店が使ってくれれば、それがセールストークになる!」
そこで、ある出会いが…
有名レストランの「ノブ」のオーナーから相談を受けました。
「乾燥味噌をつくってくれない?今は自分で作っているんだけど、この作業が大変なんだよ」
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問題
「そう簡単には作れない。ノブさんのレストランだけだと、生産量が少ないから儲からない。
でも断ると、もう会ってもらえないだろう」
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現社長は、ドライ味噌を作ることに決めた!
↓
商品ができて、ノブのレストラン全世界で採用してもらった。
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”有名店が使っている”と評判が広まり、ひかり味噌の海外での売り上げが増加
今海外では、日本食・発酵食品が人気で追い風!
ひかり味噌は、アメリカでの販売は後発でしたが、今では海外での販売が味噌シェアでは30%です。
将来的には50%を目指すそうです。
お願いされた商品を作ることは、ハンドメイドではオーダー製品を受けるかどうかだと思います。
オーダーを受けることは、コミュニケーションの時間がかかったり、オーダー逃げをされて、買ってもらえないリスク、また、材料費がかさんだり、作品のデザインを考える時間などもかかってくると思います。
しかし、意外にオーダーがキッカケで、将来的な売上が変わる可能性があります。
こだわりの強い商品は、万人受けするわけではないため、頑張ってつくってもコストが見合わないかもしれません。
しかし、強いファン層が付けば、一気にあなたの独走状態になることも。
私たちは人間はつい忘れてしまうことがあります。
自分の幸せのためには、周りの人が幸せであることが大事。
幸せを一つづ積み重ねれば、大きな幸せにつながります。
お客さんに強い満足、感動があれば、お客さんは自然に人に話したくなる。
人間社会は、同じ趣味思考の人が、仲間を作りますが、その仲間の中であなたの作品が知られれば、また欲しいと思ってくれる人が出てくるかもしれません。
簡単にはこの流れを作ることはできませんが、失敗とたくさんの試行錯誤があって、良い作品が生まれ、
欲しいと思う人、ファンが生まれると思います。
キッカケの連続
ひかり味噌の躍進は、キッカケの連続でした。
キッカケに気づくためには、常に問題を意識すること、打開策を考えることです。
ただし、ただただ、考えるだけではダメです。考えるだけではアイデアなど浮かびません。
今の世の中の風潮を知る必要があります。知らなければ、欲しいものを作ることができません。
様々な情報を仕入れる必要があります。ハンドメイドに直結するアートな情報も大事ですが、販売に繋がるような情報も大事。
つまり、色々な情報を集める必要があるのです。
ひかり味噌が、業界で圧倒的多品種・少量生産をしている理由はこのためでしょう。
情報収集した結果、「こんな需要があるから」と商品を作り、
販売することで継続的に売れるかの結果が分かります。
もう一つひかり味噌が力をいれていることがあります。
徹底的に試食販売をするそうです。
過去にはキャンプ場、マラソン大会でも試食を行ったそうです。
通常試食と言えば、スーパーでの店頭だと思いますが、常識を超えた販売の裏には、お客さんの層がそこにいるからではないでしょうか。
需要が減った、ネット販売で売り上げが伸びないのは、アプリの改悪やライバルだけのせいではないのです。
改善しなければ衰退しかない。挑戦し続けなければ続かないのです。